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#26 罪を犯した人の社会復帰

罪を犯した人が
再び犯罪を起こさなくても
生きていける社会へ。

福祉経営学部 医療?福祉マネジメント学科

鷲野 明美 教授

鷲野明美教授の研究分野は、社会福祉学(司法福祉)、刑事法学(刑事政策)。刑事司法におけるソーシャルワーク、刑事司法と地域の協働などをテーマに研究に取り組んでいます。先生に、罪を犯した人の社会復帰について話を聞きました。

社会課題

犯罪を繰り返す高齢者が増えている。

 入所受刑者の人員は年々減少傾向にありますが、そのなかで65歳以上の高齢者率は上昇傾向にあります。2023年(令和5年)の高齢者率は14.3%で、2004年(平成16年)と比べて10.0ポイント上昇しています。高齢受刑者の犯罪でもっとも多いのは窃盗で、道路交通法違反、覚せい剤取締法違反、詐欺、傷害?暴行の順に続きます。このうち窃盗などの財産犯では、万引きや空き巣ねらい、無銭飲食などが多く、経済的貧困、アルコール?覚醒剤依存、賭博などの生活苦や私欲による動機が多くみられます。

 特に高齢受刑者の場合、出所しても帰住先の確保が難しく、犯罪を繰り返す高齢者が多いことが問題になっています。70歳以上の再犯者率を見ると、2000年は18.7%でしたが、2015年までに5割に上昇し、2020年は51.9%に達しています。その背景には、受刑者の年齢が高くなるにつれ、仕事や家族などの人間関係が希薄になり、身寄りのない孤独な人が増え、社会でのやり直しがききにくくなる実情があるとみられています。また、受刑者の2?3割前後は、疑いも含めて知的障害があるとの調査結果も報告されています。こうした高齢者を支え、犯罪を防止していくには、ソーシャルワークを中心とする社会復帰に向けた支援が必要です。

出典:

INTERVIEW

ドイツの「刑事司法とソーシャルワークの連携」に学ぶ。

先生が司法と福祉の問題に興味をもたれたのはどのようなきっかけからですか。

鷲野

私は大学の教員になる前、16年間、愛知県内の町役場や市役所で社会福祉士として勤務していました。当時、高齢者からの相談をいろいろ受けるなかで、福祉職も法学の知識が必要なのではないかと思い、通信教育で勉強を始めました。そのなかで、特に高齢者犯罪に関心を持ち、高齢受刑者の社会復帰に向けた司法と福祉の連携などについて学びを深めていきました。仕事を持ちながら修士課程に進んだ後も、ドイツでの高齢受刑者の処遇やソーシャルワークの関わりについて調べたりして、もっと刑事司法にソーシャルワーカーが関わっていく必要があるだろうという考えに至ったのです。

ドイツの方が日本よりも支援体制は進んでいるのでしょうか。

鷲野

ええ。ドイツでは、日本よりも古くから、刑事司法の各段階にソーシャルワークが関わってきました。

検察および裁判の段階での裁判補助は 1920年代から、行刑(刑務所等)のソーシャルワークは 1856 年から、保護観察は 1953年からその活動が行われてきました。また、ドイツでは、1976 年、すなわち日本より早い時期に制定された連邦行刑法が自由刑の執行目的を「社会復帰」であると明示し、社会復帰を意識した処遇が行われてきました。これに加えて、連邦全域において民間団体による犯罪者支援も盛んです。

国による状況の違いはありますが、ドイツの方が日本よりも早くから社会復帰を意識した取り組みが行われていると思います。

ただ、近年は日本もがんばっています。2009年からは司法と福祉の連携による支援が制度として開始され、罪を犯した高齢者、障害者等のなかで福祉の支援を必要としている人たちを司法から福祉につなげるという取り組みを進めています。これによって、福祉等の支援が届かず困窮するなかで罪を犯した人たちが、その人らしい生活を実現することができ、そのことが再犯防止につながっています。当初は刑務所等を出所する人たちへの支援を中心に行っていましたが、今では被疑者、被告人等への支援にも力を入れています。

「社会がつくりだす犯罪」と「社会がつくりだす被害」。

罪を犯す人、そして、刑務所を出所後も再び罪を犯してしまう人の背景には、どんな問題があるのでしょうか。

鷲野

一番大きな問題は社会的孤立だと思います。家族はもとより、知人、地域の人、行政にも頼ることができない。さらには、情報からも孤立している。そのため、その人が抱える困難を解決することができずに、犯罪という行為として表面化してしまう場合があります。私は犯罪そのものは肯定しませんが、ソーシャルワーカーの立場から見ると、「社会がつくりだす犯罪」というものがあると思います。そして、それによって、「社会がつくりだす被害」も生まれます。また、社会が抱える課題が犯罪を誘発している側面もあると思います。たとえば、経済的な格差や不寛容な社会などに起因する問題も多々あるのではないでしょうか。罪を犯す人が抱えている問題は本当に多様で複雑に絡み合っています。そのため、いろいろな人や関係機関が連携し、息の長い支援をすることが必要だと思います。

その人が罪を犯してしまった根本原因を社会的に解決しないことには、再犯を防ぐことができないということですね。

鷲野

そう思います。これまでに、刑罰による威嚇やそこでの教育が犯罪を抑止する効果を発揮していました。しかし、近年の高齢者や障害者、依存症のある人たちによる犯罪の状況を見てみると、従来の刑事司法が犯罪防止のために取り入れてきた刑罰や刑事司法手続きにおける各種制度が、もともと意図していたようには効果を発揮できなくなっているように思います。もちろん、悪いことをしたら刑罰を受けるというのは、社会のルールとしてありますが、それだけでなく、犯罪の背景やそこに至った経緯にも目を向け、支援を注がないと、犯罪に至った根本的な問題を解決することはできません。

高齢者の孤立や不安を軽減する必要性。

罪を犯してしまう人の背景にある社会的孤立、それは高齢になるほど顕著になっていく問題でしょうか。

鷲野

そう考えられます。平成30年版の犯罪白書に、高齢者犯罪が特集されています。そのなかにある、日本とドイツ、アメリカの3カ国比較を見ると、日本の高齢者の方がドイツに比べて、近隣との関わりが浅いことがよくわかります。また、OECD(経済協力開発機構)の2005年の報告を見ても、社会的孤立の深刻度において日本はトップクラスになっています。そして、2000年、2010年の報告では、相対的貧困率も日本は高く、とくに高齢者は高いことが示されました。そのほか、老後の備えに対する充足度に関する統計を見てみますと、日本の高齢者は「今の蓄えで十分だ」と答えている人が38%くらい。ドイツは社会保障制度がしっかりしていることもあり「不安じゃない」という人の割合が約80%なんです。

日本は、高齢者の孤立が際立って高い国なんですね。

鷲野

ええ。高齢者の孤立や経済的な不安を低減するところはおそらく個人や地域だけでなく、制度政策レベルの問題でもあると思います。ただ、地域で、高齢者や障害者、困っている人を手厚くケアできれば、罪を犯さなくても生きていける人が増えると思うんです。それが、先ほど申し上げた「社会がつくりだす犯罪」を減らし、「社会がつくりだす被害」を減らすことにつながっていくのではないかと考えます。そのためには、刑事司法と福祉の連携、さらに、刑事司法と地域の連携が必要です。地域が基盤となって、人々の生活を支えていく。それでも罪を犯してしまった人がいたら、刑事司法から福祉などの支援につなげていく仕組みが必要です。実際に、日本における犯罪対策はかつて国家が担うものでしたが、再犯防止推進法という法律が2016年に成立?施行されてから、国と地域公共団体に、犯罪や再犯防止の責務があるという方向へ変わってきています。すなわち、国、地方公共団体、民間も協力して取り組んでいく方向へ転換したわけです。同法に基づき制定された再犯防止推進計画、第二次再犯防止推進計画における重点課題の一つに、司法と福祉が連携した罪を犯した高齢者、障害者等への支援が含まれています。

その人らしい生き方の実現が、幸せな地域づくりにつながる。

では具体的に、罪を犯した人をどのように支えていけばいいのでしょうか。

鷲野

刑期を終えて出所した人をはじめ、罪を犯した人たちは、もう一度頑張ろうという気持ちがあると思うんです。でも、本人の努力だけではなかなかできないところもあるので、本人を取り巻く人たちが見守り、相談にのっていかなくてはなりません。そのとき重要なのは、単に犯罪の内容を見るのではなく、なぜそのような犯罪行為に至ったのかというところにも目を向けて、どのような支援が必要なのかを考えること。そういった支援をリードしていくのが、ソーシャルワーカーです。ソーシャルワーカーは、罪を犯した本人はもちろん、家族やその人の所属する組織、地域、さらに制度政策にも働きかけていく専門家です。その人が社会的に孤立しないような環境を整え、高齢者や障害者が孤立しないような地域を育てていく役割を担いますし、さまざまな支援のケースから共通の課題を抽出し、政策に反映させていく役割も担います。そのように地域のソーシャルワーカーが専門的な力量を発揮していくことが、強く求められていると感じています。

最後に、今後めざすべき「罪を犯した人の社会復帰」のあり方についてお聞かせください。

鷲野

私は「罪を犯した人の社会復帰」とは、その人らしい生活を実現することだと考えています。その人が人とつながり、その人らしい生活を営んでいく、それによって、ウェルビーイング(人間の福利=幸福)が向上していき、その結果、再び犯罪を起こさなくても生きがいをもって暮らしていくことができるようになります。そうなれば、再犯防止につながり、新たな被害者の発生を防ぐことにもつながります。罪を犯した人も、他の人と同じようにその人らしい生活を実現できるように支援することによって、みんなが幸せに生きられる社会へ一歩ずつ近づいていけるのではないでしょうか。

(一財)ワンネス財団のチャレンジ

一般財団法人ワンネス財団は、2005年に活動をスタート。奈良県と沖縄県で複数の指定障害福祉サービス事業所や法務省保護観察所登録の自立準備ホームなどを運営し、罪を犯した人、依存症者、ひきこもり者をこれまでに約1400名受け入れ、ウェルビーイング(精神的、身体的、社会的つながりの健康)の視点から生き直しを支援しています。

生きがいをもった生きなおし、
幸せに生きる人を増やし、
犯罪が生まれない社会づくりを目指す。

一般財団法人ワンネス財団

本部 沖縄県南城市玉城字船越218-1
奈良本部 奈良県大和高田市東中2-10-18

https://oneness-g.com

日本初、出所、出院者のための
ライフキャリアスクールを運営。

 ワンネス財団が罪を犯した人たちの支援に本格的に乗り出したのは、2020年。日本で初めて、出所、出院者のためのライフキャリアスクール「Power to the Prisoners!」を開設。断らない応援をモットーに、どんな罪を犯した方でも全国の刑務所?少年院から受け入れてきました。これまで、罪を犯し施設に入所した方は、15歳から88歳までの386名(2005年9月?2024年10月1日の合計)。非再犯率は83.68%という高い実績を上げています。

 同スクールの特徴は、「居場所、応援者(理解者)、幸せに生きるためのスキル」の三つを用意し、ウェルビーイングを取り戻しながら、個々の生き直しを支援していること。虐待など悲惨な幼少期の経験から、自分に否定的な価値しか見出すことのできない入所者に安心できる居場所を用意。ポジティブ心理学を基盤にしたグループワークを中心に、スポーツやホースセラピーなどの野外活動やアートを用いたワークショップなど多様なカリキュラムを展開。 さらに、農業(三重県でのいちご栽培、沖縄県でのバニラビーンズ栽培)などに携わるカリキュラムを通じて、それぞれの得意分野を伸ばし、人生の意味、意義を感じられるよう導いています。1年半から2年で人生の土台をつくり直した入所者たちは、地元企業を中心に就職するほか、その人の特性に応じて就労継続支援A型?B型(※)を利用したり、老人ホームに入所します。また、そのまま財団に残って職員になる方も多く、「ワンネス財団に出会って人生が変わった」という当事者のサポートが、次の入所者の安心や信頼にもつながっています。

※就労継続支援A型は、企業などで働くのが難しい方が雇用契約を結んだ上で、支援のある職場で働く福祉サービス。就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに働く福祉サービス。

罪を犯した人を重層的に支える
「あしかプロジェクト」。

 罪を犯した人に伴走し、その社会復帰をずっと支援していくには、一つの組織だけでは限界があります。そこで同財団は関係機関に相談し、2020年秋、奈良県で「あしかプロジェクト」を立ち上げました。これは、奈良県地域生活定着支援センター、罪を犯した人の雇用に関心を持つ会社、同財団とは異なる福祉事業者、弁護士、同財団がコアメンバーとなり、それぞれの団体の強みを持ち寄り、一つの大きな受け皿をつくるものです。複雑な問題を抱えた方の事例をみんなで情報共有し、応援の道筋を立てると同時に、必要に応じて司法、行政、医療、福祉と連携しながら、包括的に支えています。近年は70代、80代の高齢者の事例も増えており、福祉の制度などを超えた柔軟な支援が課題になっています。

 同財団の今後の目標は、現在の定員枠を増やし、生きづらさを抱える方の居場所を育てていくこと。罪を犯した人が幸せに生き直すことができれば、それだけ再犯も減り、その方の周りにも幸せは広がっていきます。ワンネス財団から世界平和を。その大きな目標に向かって、これまでもこれからも情熱を注いでいきます。

〈インタビュー協力〉
一般財団法人ワンネス財団 共同代表 伊藤宏基?三宅隆之

  • 福祉経営学部 医療?福祉マネジメント学科
  • 社会福祉
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