社会福祉士の専門性を高めた

足立 裕紀さん
岐阜県在住。大学卒業後、信用金庫を経て、云顶娱乐棋牌_云顶娱乐网址¥app下载官网中央福祉専門学校社会福祉士科へ入学。社会福祉士の資格を取得し、関市社会福祉協議会に入職。愛知県社会福祉協議会を経て現職。業務と並行し、短期養成施設にて精神保健福祉士資格を取得した。
孤立する人を減らしたい
社協を目標に社会福祉士を取得
最初に、社会福祉士の資格を取得しようと思った理由を教えてください。
元々地域に関わる仕事がしたくて、新卒で信用金庫に就職しました。担当エリアを回る中で知ったのが社会から孤立している人が多いことで、さらにある時、お客様の一人が孤立死されたのです。ショックを受け、孤立する人を減らすにはどうしたらいいのだろうと考え、地域福祉について調べるうち、社会福祉協議会とそこで働く社会福祉士のことを知りました。そんな仕事をやってみたいと思い、退職して中央福祉専門学校の当時あった夜間課程に入学しました。
中央福祉専門学校社会福祉士科での学びはいかがでしたか?
今の自分の基盤がつくられたと言って過言ではありません。現場経験を積みたかったので、学校が紹介してくれた高齢者施設でアルバイトしながら学び、施設の担当者がOBで、公私ともによくしてもらいました。勉強は学校の自習室ですることが多く、目標とした社協を意識した勉強もしていたので少し大変でしたが、先生方、先輩にお世話になり、バイトも同じだった同期生などいい仲間もできて、濃密な時間でした。
社会福祉士の資格取得後、目標だった社協へ入職されました。
現在の市社協で2年務めた後、見識を広げたくて隣県の県社協へ移り、その後現職に戻りました。社会福祉士のいいところの一つが流動的な働き方も可能なところです。
どんな業務に携われていますか?
幅広く従事しています。最初の頃のメインは日常生活自立支援事業で、判断能力が不十分な方のお金の出し入れや事務手続きなどをお手伝いしました。県社協では貸付の他、県の子供会連合会も担当。今は法人後見事業などの権利擁護に関する業務が中心で、成年後見制度の相談窓口となる中核機関の立ち上げにも関わってきました。また、その間に生活困窮者自立支援事業も担当しました。経済的に困窮し、最低限度の生活が維持できなくなるおそれがある方を支援するものです。

生活困窮者の支援をきっかけに
精神保健福祉士の取得を決意
精神保健福祉士の資格を取得しようと思ったのはなぜですか?
生活困窮者自立支援事業を担当した時、対象者の中に精神障害や発達障害の疑いがある方が多かったことがきっかけでした。障害が生活困窮に陥る要因になり得るため、場合によっては障害と向き合うことも必要です。より適切な支援のために精神保健福祉分野の知識を身につけたいと考えました。
その学びはいかがでしたか?
社会福祉士の資格を持っていたので試験科目は専門科目のみで、医学的な内容が多く、目を背けてきた病名とも向き合い、社会福祉士で学んだ内容の深掘りもありました。
よかったのは、実際に関わっているケースと照らし合わせ、自分の中で整理できたこと。一方で、違うアプローチもできたのかと思うことも。知識の有無で対応も変わるので、学び続けなくてはいけない仕事であることを実感しました。
社会福祉士に加えて精神保健福祉士の資格を持ったことで、仕事に変化はありましたか?
精神障害や発達障害に対する偏見が自分にもあったことを自覚したうえで、心の病は誰しもに起こり得ると認識し、対象者とよりフラットに接することができるようになりました。これは社会福祉士の倫理綱領にもあるもの。その人をまっさらな状態で見るというところでも、専門性が高まったのでは。
ソーシャルワーカーに必要な、幅広い視野?視点やジェネラリストのバランス感覚といったものが強化され、何に気づけるかの引き出しも増えたのではないでしょうか。
特に生活困窮者自立支援事業や重層的支援体制整備事業※の個別ケースでは、受診につなげ、障害と向き合ってもらうプロセスを踏むことが多く、身につけたスキルは日々役立ちます。相談支援の現場で知識が生かせるのはもちろん、精神保健福祉士の資格があることで踏み込みやすくもなったと思います。
具体的にはどんなケースでしょうか?
例えば、発達障害や軽度知的障害があることで社会に適応できず、引きこもったまま50、60代になり、親御さんが亡くなって生活が困窮するケース。必要と判断して受診につなげる場合がありますが、その際の説得力も増します。
社会福祉士+精神保健福祉士で
時代に求められるソーシャルワーカーへ
その他にも両方の資格を持つメリットはありますか?
資格があることでその分野の勉強もしやすくなります。私はいずれの専門職団体の研修会にも参加しているのですが、両方から情報が得られることで見識が広がっています。両方あるからこそ得られる視点や気づきもあり、できることが増えます。
また、地域の精神科のスタッフなど、専門職同士のつながりができるのも強い。福祉はチーム支援が基本で、頼ったり頼られたり、融通し合ったりしながらみんなで支えることが大事ですが、両方を持つことでその幅が広がるのもメリットです。
あと、名刺にあるだけでも信用を得やすいということもあります。ただし、資格があるだけでは意味がなく、どう生かすかが大切なので、取得時の思い、初心を忘れないことを肝に銘じています。
精神保健福祉士の資格取得を考えている人にメッセージをお願いします。
精神保健福祉分野のニーズは高まっており、引きこもり支援、重層的支援体制整備事業など、時代が求める支援に関わる上でも強みになり、両方あるとよりよいのは確かです。
生きづらさを感じたり、課題を抱えたりしている人の中には、原因に障害があることが少なくありません。それがわからず苦しんでいる人がいます。受診への入口になることが多い社協職員はもちろん、バランス感覚や幅広い視点?視野を持ち、よりよい支援ができるソーシャルワーカーを目指す方はぜひ取得してください。

※重層的支援体制整備事業:地域住民の複雑化?複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築するため、属性を問わない相談支援、参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に実施するもの。2021(令和3年)度に社会福祉法の一部改正により創設された。